昭和の想ひで 三 給水塔のこと

近年ネット上でよく給水塔の写真を見る。団地育ちの僕もやはり給水塔が大好きで、給水塔を見ると懐かしい気持ちになる。

だがしかし、給水塔を写真に撮ってコレクションする気持ちは湧かない。そもそもどの給水塔を見てもしっくりこない。それはきっと僕の中の給水塔ではないからだと思う。

給水塔は僕らの遊び場だった。タカオニをしたり、様々なコレクションを披露したり、ダラダラと過ごす休憩所のようなところでもあった。そしてなぜか僕らの間ではポコペンは給水塔でやると決まっていた。

僕らの給水塔は柵で囲われてはいなかった。いつでも自由にその大きな短い円筒形の台座に登って、高く伸びたこれも円筒形の塔本体に触ることができた。塔本体にはメンテナンスのために内部に入るための鉄の丈夫な扉があり、ポコペンの鬼はここで顔を扉に伏せることに決まっていた。

塔から伸びる太い2本のパイプ ーもちろん送水管であるがー に腰掛けて自慢のべったんコレクションを広げてみたり、その上に寝そべって見たり、今となってはもう何も覚えていないくだらない話に興じてみたりした。

春の暖かい日には台座に寝そべると、お日様に温められたコンクリートが温くて気持ちよかったし、給水塔の周りは何もないただの原っぱだったので、タンポポが咲くのやら蝶が飛ぶのやらを眺めてみるのもよかった。

僕らの給水塔にいつ柵が張り巡らされて入れなくなってしまったのか記憶にない。たぶん給水塔でポコペンをしなくなってから随分と経ってからのことだったろうと思う。

送水管に座ったり、台座に寝そべることができない給水塔はあんまり好きになれない僕の只の想ひで話である。

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